植物観察

幼稚園のとき、園児それぞれが一鉢ずつ朝顔を植えるやつがあった。教室の壁にはやはりそれぞれのなまえの書かれた真白い紙が用意され、花が咲くごとに折り紙で作った朝顔を貼りつけましょうとのことだった。お世話して観察して報告するの初歩だ。ちょうど七夕飾りを片付けたあとの教室が彩られてゆくという算段もあったろう。ところがわたしの朝顔だけが一輪も咲かなかった。植え木鉢はところ狭しと並べられていたので目立たなかったけれど、教室の後ろの壁の空白は異彩を放っていた。わたしはどちらかというと熱意のない子供だったから、まず見落としている或いはサボッているとおもわれた。でもほんとに、まじでガチで咲いておらず、つぼみも見当たらなかったので、先生がたは朝顔をタブーとした。みんなたちも同情したり、意地悪かましたりに飽き、わたしの朝顔はみどりばかり生い茂らせて夏休みを迎えた。鉢は園児それぞれが自宅に持ち帰った。朝顔はまもなくボコボコと咲きはじめた。幼稚園がきらいだったのだとおもう。