毎夏、暑さにあの熱さをおもう。もちろんぜんぜん足りない。とんでもないことをしたものだ。近ごろよくおもいだされるのは被爆者のモノローグだ。
わかっているのは「死ねばいい」と
誰かに思われたということ
こうの史代『夕凪の街』より
そしてこの、"とてつもない巨大な悪意"*1の出どころに至る次作の、
暴力で従えとったいう事か
じゃけえ暴力に屈するいう事かね
それがこの国の正体かね
うちも知らんまま死にたかったなあ……
こうの史代『この世界の片隅に』より
ごくささやかに暮らしているだけだとしても、どこかの片隅への侵略を、暴力を否定しないなら加担することになってしまう。悪意がとてつもなく巨大になってしまうのは、たくさんの無関心や知らんぷりのせい。死ねばいいって、おもっているのとおなじ。誰かのことをそんなふうに、おもいたくなさすぎる。
あのくだり、じぶんはまず本邦は戦争加害国という認識があるせいかしら、なっとくの慟哭でした。ただもっと広く深く前提として共有できていれば、うちら暴力で従えとったいう事よと独白したろうし、無視してきた被害者の存在を叙述トリック的に描いたりも。