右斜め 45°からえぐるように

打たれた。予告篇に遭遇して以来ずっと楽しみにしていた『ケイコ 目を澄ませて』*1、すごくよかった。リングに立つケイコ、リンクに立つフィギュアスケーターのよう。ボクサーもスケーターも、ひとは基本ひとりで戦うのだという恐ろしい現実をとてつもなくうつくしく見せつけるスポーツだとおもっているし、スケートのほうの全日本選手権を目前に控えていることもあって、引き寄せて見たきらいはあります。でもそれを可能にさせる姿がケイコにはあった。なので帰宅後に見つけたインタヴューのなかにその意識を確認したときはへらへらしちゃった。

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“結局はやっぱり自分自身との闘いをしてるんだ”

ね。ただ相手を痛めつけたいなら喧嘩でじゅうぶん。ケイコもそもそもは喧嘩するくらいなら…みたいな、でもだんだんボクシングがおもしろくなったんだろな。だのにお母さんのことばに悩み始めるすなお。楽しくってさあとはいえない屈託。ほんと、じぶんとの戦いとおもう。お母さんだって娘を心配しすぎるじぶんと戦ってるし、ジムのみなさんの教えたり支えたりも、そう。会長夫妻、すてきかった。美男美女で相思相愛な年の差カップルっていう漫画っぽさとリアリティ、せいかくなジャブ三発につづく左パンチ的な破壊力よ。

*1:″Small, Slow But Steady″ 三宅唱監督。耳が聞こえないプロボクサーのものがたりは、ジムと住まいと職場のある町をテリトリーに暮らす小動物のドキュメンタリーな趣。生態系への配慮のかんじられる距離感を保ちつつ、なんにも見逃さない細心がありました。聞こえない世界を見せる術、どんどん豊かになってくねえ。