声もない

『声もなく』*1を観ました。くちのきけない青年が身代金もくてきで誘拐された少女を預かって、幼い妹と三人で過ごす数日間のおはなし。ちょっと懐古趣味?ハートウォーミングクライムサスペンス?きらいじゃないわあ……と、まったり眺めていたら最終的には声もなかった。
こんなにも無視できる。あの子が自転車から落っこちないようしがみつくところも、助けを求めて飛び降りたところも見てたのに。機嫌をうかがったり、役に立ってみせたり、保身をはかる基礎じゃんね。だのに酷薄な親と暮らすよりもマシかもって。賢いチョヒがいれば卵売りも独立できるかもって。欲情するバカがいなくてよかったね!なんて。*2 なのでテインごと指差されたかんじ。テイン、巻き込まれた弱者でもなく、勇気をふりしぼった善人でもなく、卑劣な犯罪者として女の子から指を差されるユ・アイン、すごかった。
あの子、家ではなく学校を選ぶ慎重。賢明。ずっとサバイブしてきたんだろな。早くふつうにつか合法的に楽しく暮らしてほしい。

*1:2020年 ホン・イジョン監督脚本。原題“소리도 없이”は"Without A Sound"の意。『声もなく』、ナイス邦題。

*2:セカンドレイプとはよくいったものです。