白猫が前を

進行方向をしろいねこが横切り、そのまま車道へと出てゆくのが見えた。むこう側に渡りたいのだろう。たいへんなゆっくりで、ノロノロどころか、ノロノロ…くらいのスピードだったのでハラハラした。さいわい車の影はなく、見通しはよく、いざとなったら止めに出ようと見守った。若嶋津くんは怪我で済んだけれど、カッちゃんは、などとおもいをはせるうちに、ねこはぶじ渡りきった。そしてふと振りかえり、路傍に佇むわたくしの姿を認めると素早く路地へと消えたのだった。